会長メッセージ

恩藏直人

日本商業学会会長
恩藏 直人(早稲田大学)

2019年5月に学会長に就任いたしました早稲田大学の恩藏直人です。この日本商業学会は、私が大学院博士課程に進学し研究者を目指した時、最初に入会させていただいた学会です。もっとも思い入れがあるとともに、私の研究者人生の基盤となっています。多くの先生方と出会い、貴重な学問的刺激を与えていただきました。2018年の大会で選挙によって選ばれてから就任まで、約1年間がありましたので、学会発展のために何ができるのか、何をすべきなのか、について考えてきました。実際には、執行部の先生方と議論を重ね、取り組むこととなりますが、いくつかの課題が浮かび上がってきています。

1951年に設立された本学会は、70年に近い歴史を有しており、マーケティングや流通を中心に我が国の商業学研究の発展に貢献してきました。会員数は1000名を超えており、歴史や活動実績に照らして、社会科学分野における我が国の主要な学会の一つになっています。その一方、本学会に限ったことではありませんが、今日、我が国の社会科学分野の学会は大きな転機を迎えているように思います。少なくとも下記の二点において、私たちは本学会の対応や在り方について真剣に考えるべきであると考えています。

一つは、大学のグローバル化に伴った、研究者の価値観や活動の変化です。若手研究者は活動の軸足を海外へと移し、発表でも論文でも英語による成果を重視するようになっています。こうした動きを受けて、本学会は英語による新たな論文誌の創刊や海外学会との連携を進めてきました。しかし、研究者として高い評価を得るためには、高ランクの海外学術誌での論文掲載が不可欠であり、教員採用などにおいても重視されつつあります。グローバル化時代における本学会の在り方については、引き続き議論が必要であると感じています。

もう一つは、周辺学会との関係です。学問の細分化により、商業学関連の学会は十を超える数にまで増加しています。そうした中、商業学会は中心的な位置づけにあると思いますが、各会員は関心に応じて複数の学会に入会していると思います。研究の高度化や複雑化に伴い、心理学や社会学など隣接した学問領域の学会に入会している方も少なくないようです。学問の発展からすると、学会の増加は好ましいことですが、会員の立場からすると、研究大会が重なったり、出張が増えたりするなど、マイナス面も顕在化してきています。この点についても、共同による部会開催などの対応も試みられていますが、さらなる改善策が求められそうです。

いくつかの組織では、ビジョンと称して二十年を超える超長期的な展望を示しています。日本商業学会でも、二十年後、三十年後に我が国の大学がどうなっているのか、研究環境や研究内容がどう変化しているのか、そして学会がどのような姿になっているのか、などをイメージして、今から取り組み始めておく必要があると考えています。

会員の皆様からご意見をしっかりと伺い、執行部の先生方とともに学会の発展に取り組む所存です。何とぞ、ご支援をお願い申し上げます。