会長メッセージ

南知惠子

日本商業学会会長
南 知惠子(椙山女学園大学 教授/神戸大学 名誉教授)

2023年5月27日から2日間にわたり沖縄国際大学で第73回目の全国研究大会が開催され、大会終了翌日に第15代会長に就任しました。これから副会長の西村順二先生(甲南大学)、新倉貴士先生(法政大学)、本部理事の西岡健一先生(関西大学)とともに学会執行部として学会を運営していくことになります。

日本商業学会は1951年に商業学の発展のために設立されました。その後、研究対象を商業学に限定せず、マーケティング論、流通システム論、消費者行動研究等、関連する緒領域の発展に伴いそれらを包摂して研究対象を拡大し、学会として発展してきました。研究対象の広さと、ミクロ・マクロの両方の分析視角、理論、実証面における多様なアプローチを持つことが日本商業学会の特徴であると言えます。

歴代会長のリーダーシップのもと、学会執行部はこれまで時代の変化に合わせ、様々な課題に取り組み、学会改善を行ってきました。現在学会が直面している課題として次のようなことが挙げられます。

一つ目は、日本商業学会としての独自性の追求、学会のアイデンティティの再認識です。新興の関連領域の諸学会が発展・拡大するに伴い、商業学会は棲み分けをし、現学会員を維持し、新しく学界にポストを得る若い研究者を取り込んでいく必要があります。社会科学系の学会は社会事象を研究対象とするため、常に変化する対象に対して、学問として専門特化し成熟していくという方向性のみならず、常に先端的な研究テーマを探し、研究手法も進化させていく必要があります。

二つ目は、学術研究のグローバル化に伴い、日本商業学会自体のグローバル環境下でのプレゼンスをどうあげていくか、個々の研究者のグローバル志向との両立をどう目指すかという問題です。学会としては、これまでGAMMAといった国際学会アライアンスや、英文誌『IJMD』の発行など学会の国際化に尽力してきました。一方で、学会員個人による国際ジャーナルの論文採択が増加するにつれ、研究者個人が研究成果発表を海外に求めるという傾向、大学とくに国立大学がそれを業績評価の基準としているという現状があります。商業学会が研究成果の場として発展していくためには、どのような学会運営、学会誌刊行を行っていくかという問題は今後益々重要となります。

三つ目は、若手研究者の学会としての育成です。博士後期課程への進学者が減少傾向にあり、今後も拡大が見込めない中で、博士後期課程在籍者が確実に学界にポストを得ること、研究者としてのレベルアップを図ることを学会として支援していく必要があります。

四つ目は、学会運営におけるIT化、デジタル化の推進です。大学教員としての業務が煩雑化し、多くの教員が多忙を極めていく中で、学会参加をしやすくすることを検討する必要があり、また部会や全国研究大会、全国研究報告会、夏の学校の運営を効率化することで、学会開催の効果を上げていく必要があると考えています。

以上、課題を列挙しましたが、要約すれば、日本商業学会は、現会員にも、新会員にも主体的に「選ばれる」学会になること、そうあり続けることが重要であると考えています。そのためにまずは直面している課題に執行部として取り組んでいきたいと思います。